引用と転載の違いとは?著作物や他人の写った写真に潜む落とし穴に注意!

誰もが簡単にネットを通じた情報の受発信が出来るようになり、無断転載による著作権や肖像権の侵害が問題視されています。ネットユーザーの誰もが感じる、「引用」と「転載」は何が違うのか、どの程度ならば他人の著作物や他人の写りこんだ画像を勝手に使用することが出来るのか、扱う際に何を注意すべきか、といった疑問を解消します。

著作権・肖像権とは

引用と転載のお話をするために、著作権と肖像権の説明をしておかなくてはなりません。著作権は著作物の作成者(著作者)に対して、肖像権は写真や動画の被写体となる人物に対して、それぞれ「著作物」や「顔や姿」の保護のために発生する権利です。

よく混同されがちですが、例として下のような画像の場合を考えてみましょう。
下の画像では、カメラに向かって笑う青いパーカーの女性は自分の姿に対して肖像権を、その撮影者である白いネイルの手の女性は画像そのものに著作権を有していると言えます。自然に、簡単に発生してしまう権利であることが分かりますね。侵害しないためには、使用したい旨を事前に著作権者や肖像権者に申し入れることが必要です。

著作権・肖像権の例

しかしながら、著作権・肖像権は共に「あくまで権利として認められたものであり、法律での罰則の規定がない」ということが共通した概念となっています。つまり、侵害してしまった、もしくはされた場合に訴訟が起きると、似たような前例があれば類推して判定を下すか、手探りの状態で恐る恐る審査を進めていくしかないのです。これでは権利を持つ側も、(もしかしたら、その気は無くても)侵害した側も、泥船に身を任せるような不安を抱えなくてはなりません。常に誰もが侵す危険性を孕んでいながら、規定は曖昧。なかなか厄介な権利なのです。

著作権・肖像権について詳しく知りたい方へ

参考:JPAA日本弁理士会

陥りやすい権利侵害のケース

ネット活動で法に触れる

折角自分で工夫を凝らし、SEO対策にも万全を期したホームページを仕上げても、法に抵触してしまっていたら無意味なものとなってしまいます。ここからはWebサイトやホームページを自作する視点に立って、いくつか身近で具体的なケースを挙げながら、Web上の自分の制作物の中で著作権や肖像権を含むメディアを「引用」や「転載」の形で掲載する場合に注意する点を見ていきましょう!

引用と転載はどう違う?

端的に言ってしまうと、「引用」と「転載」は共に他人の著作物を自己の制作物の中でコピーする行為です。両者の違いは、これを私的目的以外で無断で行う場合にはっきりと出てきます。引用に関する著作権法は以下の通りです。

『引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない(ただし、公開済に限定)』

つまり、この「正当な範囲内」を超えてしまうと無断転載になってしまい、違法行為とみなされます。

著名人の名言や歌詞を自らのサイトに掲載すること

著名人やアーティストの言葉や歌詞に理念や方針として掲載したり、「かく有名な○○も××と言うように…」等と発言や格言とされる言葉を引用したりしているWebサイトをご覧になったことがあるでしょうか。見掛ける頻度が高いだけに、このような引用はどの程度であれば著作権に抵触することなく転載することが可能なのか、という点を疑問視することすら無くなってきているような気さえします。
しかし、それが著作物であり、保護期間内にある以上は勝手な使用は許されません。それぞれの著作物の形態に沿って、使用の許諾を得る必要があります。

素人による著作物は著作権を有するのか

一般的に、著作権は「プロ」が「正式に」「公的に」発表、自らのものとして「登録」した「小説」「キャラクター」「音楽」等々だけに与えられるもの、といったお硬いものであるような印象がありますが、この認識は誤りです。

落書きをする子供
例えば、SNS上でのちょっとした呟きや、折に触れて思い浮かんだ鼻歌、ノートの端に生み出された名前もないオリジナルキャラクターだって立派な著作物となり得ます。流行に乗って一人歩きしているようなイラストや、文章にも必ず制作者は存在し、彼らは当然に著作権を有しているのです。Web上で使用したい場合は本人の許可が必要なことが分かりますね。

他人が映った写真をWeb上に掲載すること

自分で撮影した写真に他人が写りこんでしまったという場合を考えてみましょう。撮ろうと思って写したのでなければ、その相手に肖像権は発生しないのでしょうか。そして、撮影者は自分だからといえど、その写真をWeb上にupして差支えはないのかが気になるところです。

判例は、「被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えて写りこんでいるものといえるかどうかを判断すべき」としています。分かりやすく解せば、写りこんだ人の顔が認識できるレベルは肖像権上まずい、ということになります。さしずめ、後姿や解像度の低い画像であれば問題ありません。心配な場合はモザイクやぼかしを入れておきましょう。

芸能人の画像をWeb上に掲載すること

かわいい、きれい、かっこいい…等々芸能人の持つ様々なカラーやプラスのイメージにあやかって、画像を転載することで自分のWebサイトを印象的で受けが良いものにしたいと考える事もあるでしょう。結論から言うと、私的使用以外で芸能人の画像を無断転載することは肖像権侵害に当たりますし、使用のためには芸能事務所の許可を得なくてはなりません。

また、イベントなどで自分が直接に芸能人を撮影することがあったとして、それを自分のサイト上に掲載することも肖像権侵害となります。プライバシー保護のための肖像権だというならば、もはや公的な人物である有名人にはあってないもののように感じられますが、やはり無許可はまずいものですね。

対策と代替措置

快適にネット活動をする

「無知は罪なり」という言葉がありますが、人間は、ある事柄にについて無知であるが故に得られない物事があったり、本人は幸せでも周囲を害してしまうものです。失敗から学んでいくことも大切ですが、法の上での失敗は賠償や刑罰を伴います。悪意で行ったのでなく、知らなかっただけ。それが罪となり得ます。

今回の著作権や肖像権は侵害の境界線は無意識の行動の中にも存在しているかもしれない、身近なものです。知識を備えておくに越したことはないですよね。

ここでは対策と代替措置をご紹介します!

引用の明記と信頼性に配慮すること

引用と転載の違いの項でも触れましたが、引用と転載の違いは他人物のコピーの度合の寡多にあります。引用は認められる範囲内で無断で行うことができますが、その範囲を超えてしまうと無断転載になってしまい、法に触れてしまいます。そして、実際に制作物の中で引用を行った際にはその引用元を明記することが必須です。

例えば、自分が情報を引用、参考にしたWebサイトがあればそのURLを明記することが不可欠ですし、自分のそれと直結するため、そのサイトの信頼性をしっかりと下調べしなくてはなりません。某大手サイトもこれを怠ったために閉鎖に陥ったことは記憶に新しいですよね。

権利の保護期間に着目すること

使用したい著作物や画像が決まったら、その保護期間を調べてみましょう。著作権の保護期間は大まかに、実名であれば死後50年、ペンネームや無名であれば公表後50年、肖像権の保護期間も同じく死後50年と定めてあります。保護期間内にあるのならば使用の承諾を得なければなりませんが、逆に、その保護期間を経過していた場合は無許可での使用が可能です。

肖像権の保護期間について詳しく知りたい方へ

参考:公益社団法人日本写真家協会

著作権の保護期間について詳しく知りたい方へ

参考:公益社団法人著作権情報センター

事前の承諾を得ること

再三の記述となりますが、著作権や肖像権が有効な素材を使用したい場合はその承諾を得ることが必須となっています。しかし、著作物のジャンルは多岐に渡るため、場合によっては著作権者と管理者がずれていることがあります。音楽や歌詞キャラクターなどがそれに当たりますね。

例えば、前述の好きなアーティストの歌詞を引用したい場合、その歌の作詞者に直接の承諾を得る必要はありません。歌詞や音楽の使用の許可は原則として一律JASRACが担っているため、JASRACにアクセスして使用の許可を得ましょう。

JASRAC公式サイトはこちら

パブリックドメインと著作権フリー素材

前記3つの対策方法では、引用の元となるメディアの信頼性を吟味したり、使用の許諾を得ることが必要だったりと、手間がかかる上に、場合によっては使用を諦めなくてはならなくなる懸念があります。それに対し、パブリックドメイン(著作権、肖像権の保護期間が終了されており、公有的に使用が可能な著作物)はそのデメリットがありません。スピーディーに、簡単かつ安全に素材を集めたいと考える方には強力な味方となるのではないでしょうか。
また、パブリックドメインと同様、著作権フリー素材も著作権を気にせず使用できる、文字通りのフリーな素材です。こちらは期間内にありながらその権利が手放されている素材の事を指します。しかし、こちらは制作者がその使用の範囲を限定している場合もあるので(この場合、ロイヤリティーフリーと呼ばれます。)利用規約などをよく読んでから使用することを念頭に置いておきましょう!

パブリックドメインに関連する過去の記事はこちら

ロイヤリティーフリーに関連する過去の記事はこちら

快適なネット活動のために

いかがでしたか?普段何気なく行うネット活動の中で、うっかりとやってしまっていた事例や、内心違法ではないかとやましく思っていた事例はあったでしょうか。著作権や肖像権はプロから素人まで、出版物から何気ないSNSでの呟きまで、と広範囲に渡る権利でありながら法律で定義されたものではないため、罰則や賠償の線引きが曖昧になっています。トラブルなく快適にネット活動をするために、他人の著作物や肖像を含むメディアを取り扱う場合は注意深く、客観的な良心に従った行動を心がけましょう!